スマホ向けサイトについて

うちの会社はコンシューマー向け中心のメーカーさんなので、スマホ向けにはスマホ表示になるような仕組みがあります。

でも、BtoBがメインの私の担当しているサイトでは導入をしていないというか、スマホで見たときもPC表示のままにしています。システム的には同じフォーマットに載っているのでスマホ表示させようとすれば明日にも出来るんですが、デメリットの方が大きすぎるため一度勝手にスマホ表示に移行させられたのを無理やりPC表示に戻させています。

 

なんでスマホ表示がダメなのかというと

「自社のスマホ表示システムがBtoC向けに設計されていてビジネスに適していない」ためです。

スマホ表示に限った話ではなく自社全体のWeb設計がBtoC向けにカスタマイズされているので、PC表示のスタイルシートにも多々多々不満はあるはあるんですが、スマホ表示になるといくつか根本的な問題が発生します。

 

問題点1.商品DBサイトになっている

Web全体でもその傾向はあるんですが、スマホ向けは特にEC向けサイトのデザインやテクニック論が幅をきかせているというか、EC向けに開発されたフォーマットを他サイトでも流用していることが多いです。キャッシュを産み出すEC向けの方が、単なる効果の分からない広告宣伝費扱いのメーカーWebサイトより、投資額が多いのは当然で必然的な帰結ではあります。

自社のスマホ向けサイトも、そういう既存のものを買ってきてPC表示のWebサイトをスマホ表示させるようにしているので、とってもECチックです。ECチックでも実用で困らなければいいのですが、個別商品の紹介(機能・仕様表の表示)及び商品比較が優先表示されるようになっています。つまりはAとBという製品を見比べて違いを判断することに重点が置かれていて「その商品で何が出来るか」とか「組み合わせてどう使う」のような情報がありません。BtoBとして重要な"ソリューション"が上位導線から消えてしまっているんですね。

ついでにいうと個別製品のページからソリューションのページに飛ぶと、ソリューションページはスタイルシートとは別に独自設計されているのでスマホ表示されずにPC表示となります。。。

 

問題点2.既存顧客サポートという概念の欠如

BtoB向け製品ですとファームアップやらセミナーのご案内のような、購入済み顧客向け情報が重要です。というかサイトにアクセスする人の半分以上がマニュアルだったり設定例を見にくる「購入済み顧客」もしくは「顧客に繰り返し提供する販売代理店」です。

BtoC向け製品では、アップル社でもなければ毎週のように同一メーカーのサイトにチェックにきて「あれを買おうこれを買おう」と悩んだり、「買った商品のホームページをなんとなく見に来る」ということは少ないです。(超推測、ソース無し)

どちらかというと店頭で「この商品どんな商品だろう」とスマホでメーカーサイトをチェックするという使い方がメインになるので「問題点1.商品DBサイトになっている」でも書いたように、BtoCでは商品DBサイトに

するのは合理性があります。

しかし、BtoB向け製品では「店頭でちょっと情報を見て購入する」という購入導線はありません。スマホ/タブレットでサイトを見るというのは「客先での設置作業時/トラブルシューティング」がメインと想定されます。

そこで必要とされているのは個々の製品のスペックではなく「マニュアル/設定例にすぐ辿り付ける」など必要とされる情報への素早いアクセス性です。ユーザーは普段は会社のPCで製品サイトを見ていますので、出先でサイトを開いたときにPCと違う表示と導線というのは混乱の元です。何度も同じサイトに来て、かつスマホで見るのは特殊なケースと考えるとスマホ向け表示というのはメリットがありません。

最近、タブレットで見ている人は増えていますが、タブレットの画面サイズならPC表示でそれこそ構いません。

 

問題点3.スマホ向けにも導線設計をし直す必要が出てくる

商品ページで機能と仕様さえ確認できれば構わないコンシューマー向けサイトならともかく、BtoB製品では製品ページ内だけでユーザーの求める情報を提供しきるのは難しいです。上述のように製品ページを訪れるのは購入検討者だけでなく既購入者も多いですし、また属性も「エンドユーザー」だけでなく「販売店」や「SIer(構築業者)」など多岐にわたります。BtoC向けサイトの導線設計は「エンドユーザー視点」だけで問題ありませんが、BtoB製品ではそれぞれのお客様が必要とする情報に簡単にアクセスできる導線設計が重要となります。

(導線の問題はサイト内検索が精度高ければ余り考えなくてもいいのかもいしれませんがWebページ内の検索窓は「全社検索」になってしまっていて、他事業部の商品まで検索に掛かってしまうので余り役に立っていません。)

ということで、PCサイトの導線設計は非常に気を使って設計されています。スマホ表示だとサイドナビとかバナー類が丸ごと吹っ飛ばされるので、そうした導線設計が全て狂ってしまいます。

またPCサイトを作成するだけでも導線設計と運用時のリンク漏れやリンク消し忘れなどについては定期的なチェック&メンテナンスをしないと修正抜けが発生しますが、スマホ表示もあると二重にチェックする必要が出てきて、且つPCでなくスマホ/タブレットでチェックしなくてはいけないことになります。かなり面倒くさいです。コンシューマービジネスをしていて「スマホ対応しないとユーザー要望に応えられない」ということであればともかく、BtoB製品では会社のPCで製品チェックするのをまだまだ前提で考えて問題ありませんので、そこの工数を投下する気にはならないのですよね。

 

ということで「スマホ表示対応」なんていうと、ついつい「やった方がいいよね~」みたいな反応があるんですが、商品やビジネスによってはデメリットの方が大きいということをコンシューマーやEC向けばっかりやっているWeb屋さん達には理解して欲しいと思います。