営業の作るドキュメントのクオリティについて

某メーカーでカタログ/ホームページの担当を主にやっているのですが、カタログ/ホームページなどの販促物におけるドキュメント管理やテクニカルライティングの現状というのは惨憺たるモノがありまして、どうやったら改善できるかということに日々頭を悩ませております。

 

そもそもの問題点として、カタログ/ホームページなどの販促物は営業が作成するということがあります。営業担当者はだいたい営業部内の人員ローテーションで回っており、つい先日まで現場で営業活動をしていた人間がある日辞令をもらって販促物制作担当になったりする訳です。

「現場感がある」と言えば聞こえはいいですが、ドキュメント管理やテクニカルライティングの訓練を全く受けたことが無い人間が対外的に公開されるドキュメントの制作を行うことになるので、ある程度適性を見極めてアサインされるとしても、組織的にドキュメントとしての質を維持改善していく仕組みにはなっていないのが正直なところです。

しかも前任者が入れ替わりで支店に出たりしてしまうとノウハウの伝承もろくになされず、結果として属人的もしくは外注頼みの販促物制作がなされることになります。

販促物制作のノウハウ引継ぎは総合カタログのようなある程度まとまった量のある制作物を一緒にやりきらないと難しいですが、私の所属する規模のビジネスだと営業企画/販促物担当者は1名しかいないので(内販促物制作は私の労力的に半分弱)、共同作業をやる余裕はなく担当の変更は単純な入れ替わりを意味します。

 

入れ替わりで担当者が変更になると後任としては外注に「前回はどうやったか?」ということを聞きながら進めることになりますが、カタログ/ホームページなどの販促物制作会社は軸足はデザイン系のスキルに寄っていてドキュメント管理に弱かったりします。テクニカルライティング出来る人はたまにいるけど本当にたまに。いても外注のそのまた外注/協力会社の人だったりします。

 

これは取扱説明書の制作現場と比べると様相が随分異なります。

取扱説明書は外注頼みの部分が多いとはいえ、少なくとも外注担当者はドキュメント管理やテクニカルライティングのプロです。取扱説明書制作会社は数社と仕事をしたことがありますが、いずこもそれなりのスキルを持っており、販促物制作会社のようにillustratorをちょっといじれるデザイン学校出たての素人が気合と根性でドキュメントを作成するようなことはありません。

また取扱説明書担当者は異動になっても営業のように支店に出てしまうことは少なく、他の取扱説明書担当だったり、部を離れても開発やCS部門など比較的近い(大体本社)場所にいます。加えて、取扱説明書担当が1人ということは結構少なく、複数の業務を共同して行うためノウハウは共有しやすいです。取扱説明書担当者が1人というケースもありますが、それは開発製品がよっぽど少ないか、制作は外注に丸投げで進行管理のみを行っている場合です。

外注に丸投げという場合では、開発/企画主務者が取扱説明書担当者も兼ねていて「取扱説明書担当者がいない」というケースも勿論ありますが、これも進行管理のみを行っているという意味合いでは1人しか取扱説明書担当者がいない場合とあまり変わらないと理解してもいいでしょう。

いずれにしろ取扱説明書担当者が1人しかいない/いないというケースでは、取扱説明書制作業務は外注が仕切っていることになりますので、ノウハウや注意事項等は外注でしっかりと管理されています。しっかり管理しないと逃げられますので、ドキュメント管理については取扱説明書制作会社はノウハウもあるため非常にしっかりしています。

 

ちょっと脱線してしまいましたが、つまりは、カタログ/ホームページなどの営業系販促物は発注側も制作側もドキュメント管理やテクニカルライティングのトレーニングを受けていない素人が業務として行っているのに対して、取扱説明書は発注側も制作側も専門職であることが多いということです。

 

取扱説明書は製品の操作に欠かせないものですし、下手なことを書くもしくは書いていないと訴訟の対象になりかねませんので、制作に際しては正確かつ抜け漏れがないことが求められまるため必然的にドキュメント管理という面でクオリティがあがっていくのは必然といえば必然です。

しかし、カタログ/ホームページは企業や製品の顔であり、そこで使われている言葉が変であったり、用語や単語が乱れていたり一致性が低いのは褒められたものではありません。デザインや見栄えでいかに化粧したところで、ドキュメントとしてのクオリティが低ければ、制作物ごとに良し悪しがぶれてしまい、継続的に製品群/企業の価値を伝えることができなくなってしまい、間違った/望まないメッセージを発することになってしまいます。

場合によってはこういうことを言われてしまう。

http://d.hatena.ne.jp/takeda25/20121206/1354771291 

 

取扱説明書制作にも関わったことのある営業担当者としては、カタログ/ホームページにも取扱説明書同様のドキュメント管理やテクニカルライティングのスキルが必要かと。

 とはいえ属人的にスキルを求めるのは難しいので、運用とシステムで如何に対策を採るかが必要になっていきます。取扱説明書制作部門でもミスが発生すると「チェックをより厳密にする」とか「注意する」みたいな文言の入った報告、つまりは「気合と努力でなんとかしよう!」という結論であることがしばしばあるのですが、個々人の努力だけではミスは失くせませんし組織として継続的な向上は期待できません。

 

営業販促物であるカタログ/ホームページを中心に、製品に付随する取扱説明書・カタログ/ホームページ・GUI/操作インターフェースなどの各種ドキュメントの管理と運用をどのように行っていくべきなのか頭の体操も兼ねて書き綴っていきたいと思います。

 

※「ドキュメント管理」と書きましたが、一般的な意味合いとはちょっと違います。もう少し適切な単語が思いついたら書き換えます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E6%9B%B8%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0